冒険者の犬

結婚3年半経過した事務職が書く日記ブログです。

いい加減にカット野菜=次亜塩素酸ナトリウム使用というのやめませんか。元メーカー社員より。

はじめに

僕は以前、某カット野菜メーカー(以下A社と表記)にて勤務しておりました。そのため、A社や同業他社さんのカット野菜生産工程をある程度知っております。

 

カット野菜についてはけっこう興味を持たれている方が多いようですね

http://d.hatena.ne.jp/doramao/20130815/1376540505

http://anond.hatelabo.jp/20130711011946

http://anond.hatelabo.jp/20130523031934

http://s424.hatenablog.com/entry/2013/08/19/112145

そこで今回は、守秘義務等に抵触しない程度に、カット野菜について記述します。カット野菜に興味の無い方と長文の嫌いな方におかれましては、そっ閉じを推奨致します。

 

なお、本記事はあくまで僕の知る企業においての話であり、事情の異なる企業もあるかと思います。ですが、チェーン展開しているような小売店と取引のある真っ当な企業については、概ね合致するかと思います。

 

 

何故書くのか

こんな記事↓を拝見しました。

知らぬは客ばかりなり 外食産業実はこんなふうに作ってます 一覧表付き 生姜焼きから、ネギトロ、クリスマスケーキまで | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]

「野菜は普通、切ってから3時間もすれば切り口から黄ばんできますが、カット野菜やカップに入ったサラダなどは、何時間たっても変色せず新鮮なままです。これは、殺菌剤のプールに浸してからパックされているためです」

食品に使われるのは、次亜塩素酸ナトリウム。高濃度だと漂白剤として使われる薬品だが、薄めれば殺菌効果のみで安全性は問題ないとされる。食材そのものではなく、たとえばパックされた刺身を新鮮に見せるための業務用ラップや照明など、見せる技術も普及しているという。

カット野菜は危ない、よろしくないという典型的な記事ですね。そういう記事を信じちゃった人のブログ記事なんかも目にします。

カット野菜の恐怖|浮気されてた?別居から離婚★27歳未来はhappyに決まってる♪

こんばんは 今日は いつもと 少し違う記事を スーパー コンビニ などで 売られている カット野菜やサラダに ついてのお話です 販売されているカット野菜は 黒ずんでしまったり しおれてしまったら売り物になりません。 そこで 変色防止、殺菌・消毒 などの処理が施されます。 通常であれば カット野菜は 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の 水溶液につけて変色を防止します。 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)は 特異な臭気

(いわゆるプールの臭いや 漂白剤の臭いと言われる臭い)を有し 酸化作用、漂白作用、殺菌作用があります。 この段階で 野菜の持つ水溶性ビタミンは 溶液に流れます。 さらに シャキシャキ感を出すために PH調整剤につけます。 カット野菜には 次亜塩素酸ナトリウムの 表示はありません。 表示義務が免除されているからです。 なんと 恐ろしいのでしょう 見た目が重視され 野菜は 添加物だらけの水の中に 漬かってしまっていたのですね。。汗 売られているもの 全てが 安全なわけではない! しっかり 食品を 選びたいですね!

元記事のあまりの鬱陶しさについつい全文転載致しました。お詫び申し上げます。ところで著者の方におかれましては、文節単位で改行するって非常に頭悪そうに見えますが、いかがでしょうか。※引用では改行を全て全角スペースに置き換えました。

問題多いカット野菜の販売 |

あれっ同じ文章だ。コピペの大元記事ってどれなんでしょうね。

 

本記事は、上記のようなあまりにも一方的でいい加減な主張にうんざりしたので書くことにしました。

なお、僕はA社を(形式上円満に)退職済ですので、もう利害関係はありませんし、A社が倒産しようが知ったことじゃありません。むしろ潰れてしまえあんな会社。カット野菜のステマでもありません。

 

消毒すれば変色しないのか

野菜は普通、切ってから3時間もすれば切り口から黄ばんできますが、カット野菜やカップに入ったサラダなどは、何時間たっても変色せず新鮮なままです。これは、殺菌剤のプールに浸してからパックされているためです。

そこで 変色防止、殺菌・消毒 などの処理が施されます。

 通常であれば カット野菜は 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の 水溶液につけて変色を防止します。 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)は 特異な臭気

(いわゆるプールの臭いや 漂白剤の臭いと言われる臭い)を有し 酸化作用、漂白作用、殺菌作用があります。

同じことを書いてますね。要約すると

「殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム)に浸しているから変色しない」

という主張であり、その前提として

「殺菌消毒すれば野菜は変色しない」

との考えに依っているわけです。参考になる研究報告があります。

茨城県工業技術センター 食品加工部 橋本 俊郎

http://www.kougise.pref.ibaraki.jp/periodical/reseach/24/N24P044.pdf

つまり次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌はほぼ無意味ということです。無意味な事をメーカーがやる・やり続けるでしょうか。

 

ところで業務用の次亜塩素酸ナトリウムは20㎏で2100円だそうですよ。

次亜塩素酸ナトリウム 12% 20KG [1ケース]

1日当たり何トン必要になることやら。仕入れ価格、作業工程、在庫管理等が原価に影響しまくっちゃいます。少なくとも僕の知る限り、

「殺菌剤のプール(どんなプール?)に浸す」

なんて処理をしているメーカーはありません。

(追記:注 消毒自体は別の手段で行っています。補足記事↓をご覧ください)

じゃあ消毒はまったくしていないの?という話~カット野菜についての追記・補足~ - 冒険者の犬

 

じゃあなんでカットしてるのに変色しないの?

この報告に詳しいです。

全国農業協同組合連合会 農業技術センター 太田 英明  菅原 渉

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1968/19/4/19_242/_pdf

カット野菜の切断刃の切れ味、不適切な脱気パック、保存温度が変色に及ぼす影響大ということですね。

 

大まかには、メーカーは以下のような工程でカット野菜を製造しています。

①低温の作業場で

②原料である丸野菜には、原則として製造当日または前日に仕入れ、冷蔵していたものを使用し

③冷水による洗浄

④カット(包丁で大まかにカットしてから機械で切る場合多し)

⑤冷水による洗浄

⑥水気を飛ばす(空気を当てます)

⑦パック詰め(適度な脱気パック、野菜によっては真空パック)

⑧冷蔵出荷

です。文字にしていない部分にメーカーのノウハウがあります。特に、原料の丸野菜を温めてしまわないように管理することについて、各メーカーは注意しております。

余談ですが、メーカーによって得意な野菜が違いまして、カットキャベツは得意だけどカットネギは苦手なメーカーとかあります。

 

特に重要なポイントは冷蔵と脱気です。

変色のクレームが発生すると、原因を調査します。調査結果では、製造~物流~店舗での陳列までの間に冷蔵されていない時間があった(温まってしまった)場合と、パッケージに目に見えないような穴が開き、適切な脱気状態でなくなった場合がほぼ全てでした。

 

水際での食い止めも大きい

商品陳列される際や、陳列後に変色が発見されたらすぐ撤去されます。陳列担当の熟練のパートさんの見る目はとてもとても厳しいです。

「これOKなんじゃない?」

とメーカー的には言いたくなるような状態の物でも即座に撤去されます。非常に運が良い?と、店頭で変色したカット野菜を発見できるかもしれません。その時にはすぐさま店員さん(パートさん)にお知らせください。

 

消費期限だってあります

大体のカット野菜商品は製造日+2日~4日の消費期限とされているはずです。それ以上だと冷蔵しててもいずれ変色します。

 

じゃあ次亜塩素酸ナトリウムは一切使用してないの?

設備・機械の消毒洗浄には使用します。機械については、

①製造前に冷水で洗浄

②製造

③製造後に冷水で洗浄

次亜塩素酸ナトリウムで消毒

⑤乾燥

の繰り返しです。

 

まとめ

  • カット野菜は変色しないからおかしいのではない。変色するような低品質の物がお客様のお手元に届くまでに廃棄されるだけです。
  • カット野菜は開封状態で常温放置したら数時間で変色します。丸野菜を家で切った状態と変わりありません。
  • 少なくとも製造工程で次亜塩素酸ナトリウムによる野菜の消毒はしません。(注.追記)id:kunitakaさんが素晴らしい解説記事をUPされていました。

次亜塩素酸ソーダを使用しない食品製造が可能なのか?って事について - 日々の小さな感動日記

製造工程で次亜塩素酸ソーダを使用していないとは言い切れません。

記事のまとめには少なくとも製造工程で次亜塩素酸ナトリウムによる野菜の消毒はしません。となっています。消毒・殺菌効果が期待できない程度の残留塩素濃度ですから間違いとはいえませんが、製造工程で次亜塩素酸ソーダが使用されていないという事はありません。間違いなく次亜塩素酸ソーダを使用した水が使われています。

  仰るとおりです。

 

おまけ:次亜塩素酸とは関係ないですが、表示について。

カット野菜(パック野菜)について : 幸食研究所ブログ

さらに「カット野菜」には中国産の野菜が混入されていることがあります。

これは食品表示の法律上の落とし穴で、(野菜以外の食品にも言えることなので頭に入れておいてほしいのです)数種類の野菜が入るカット野菜は全体の重量の“半分以上ある品目だけ”を原産地表示すれば良いことになっているのです。

消費者からすればラベルに「○○県産」と表記があれば、その中身はすべて「○○県産」のものだと思いますよね。

それがたった一種類のものの産地であって、残りの数種類の野菜

がすべて中国産であったとしても表示しなくてよいのです。

また、配分が「4:3:3」の割合であれば全ての野菜の産地を表示する義務がありません。

これを意図的に狙った業者もいるようです。

現在、チェーン展開している小売店は消費者のクレームに大変敏感です。法的に表示義務がなくとも、小売店側の基準として原産地の全表示が今のスタンダードです。特定の野菜のみ原産地表示しないなんてことはまずありません。小売店基準を満たさないメーカーは小売店と取引できません。

 

以上です。

 

 

追記

たくさんの方にご覧頂いているようで、ありがとうございます。

何か疑問質問等ございましたらお聞かせください。

知っていて、答えられる範囲で回答したいと思います。

 

追記の追記

補足等を書きました。よろしければご覧ください。

じゃあ消毒はまったくしていないの?という話~カット野菜についての追記・補足~ - 冒険者の犬

 

いただいたツイートに回答致しました

またしてもカット野菜についての話 - 冒険者の犬

 

 

久々に関連記事?を書きました

 

lagtydog.hatenablog.com