冒険者の犬

結婚3年半経過した事務職が書く日記ブログです。

自分の給与の計算方法は知っておいて損無いよ、というお話

 

  

 ツイッター上でぶつぶつ呟いたのだけど、上記絡みでネットで見かけたことについて書いておく。

 

 皆さんは自分の給与に関する規程、給与計算方法、各手当の意味および金額、自分の時間単価および残業時の割増単価、控除される社会保険料、税金およびその他の項目、締日および支給日について知っているだろうか? 恐らく、興味のある人、総務系の人および経営者を除いて、自分の給与だとしても、それらについてある程度正確に認識している人は少ないのではないか。原則として、まともな法人なら、例外的なミスを除いて間違いなく給与は計算され、支給しているはずだ。そこは信頼して良いと思うが、それでもだいたいの意味やルールを知っておいて損は無い。

 

 まず、締日と支給日の関係には色々なパターンがある。メジャーなところで、

  • 15日締・当月25日払
  • 25日締・当月末払
  • 月末締・翌月15日払

あたりが挙げられるだろうか。締日および支給日の日付そのものには大した意味は無い。意識しておくべきことは、○月○日に自分の受け取る給与が、実態としていつからいつまでの勤怠分なのか、ということだ。例えば、月末締・翌月15日払のような、『1か月働いた分の給料を次の月の15日に受け取る』という判り易いパターンならいいのだけど、そうではない場合も多々ある。

 多々ある内のレアケースとして、前払いの場合、例えば月末締・当月27日払、というような、勤怠締日の前にその勤怠月の給料が支給される場合は要注意だ。この場合、28日頃~月末までについては、ルール通りに出勤して、かつ遅刻早退残業無し、という条件で計算し前払い。次の月の支給の際、28日~月末分の実態を反映させ調整、となるはずだ(自分が実際にそういう仕組みのところを見たこと無いので、推測。実際の規則は各事業所ごとに色々あると思われるが)。実務上の実態としては、勤怠の締日は末日だけど、給与計算としては前月28日~当月27日までで給与計算し支給、というような流れになるだろう。件のツイートの方は正にこのパターンだと思われるのだが、そうするとどうなるのだろうか。

 例えば5月末に退職したとしよう。そうすると、5月27日に、勤怠上は5月1日~5月31日の給与、実態としては4月28日頃~5月27日頃の給与が支給されることになる。翌6月28日に、5月28日~5月31日分の給与が支給されることになる。件の方のツイートを見る限りでは、支給額が3日分+残業代なので、このあたりが妥当な線なのではないだろうか。

 一方、給与とは支給額だけではない。控除されるものもある。年金、健康保険料、雇用保険料、介護保険料と言った社会保険料、住民税、所得税など税金や、昼食代、駐車場使用料あたりが挙げられる。社会保険料は月末時点で在籍していれば、その翌月支給の給与から控除する。日割り計算は無い。件の方のツイートを見る限り、3日分の支給額-社会保険料(月額)なので、総支給額がマイナスになっている。色々な理由で支給額が少ない場合、トータルでマイナスの総支給額(給与)となり、不足分を本人から徴収すること自体はそう珍しくない。しかし、特に知識も無い人が、総額としてマイナスの給与明細を見て驚くのも仕方ないだろう。

 驚いた場合に問い合わせるべきは、職場の給与計算担当部署だ。職場の給与計算のルールを管理・運用しているからだ。上記を読まれた皆さんはお分かりかと思うが、実務上のルールは職場によってかなり異なる。自分がルールを熟知し、そのルールおよび勤怠実績を公開した上で広くネット等で意見を求めれば正しい解答が得られる確率は高いと考えられるが、自分がルールをわかっていないのであれば、まず問い合わせるべきは職場の給与ルールの担当部署だ。『よくわからないが何かおかしい』程度の感覚・認識でネットの海に意見を求めても、クソの役にも立たない素人の意見が寄せられるだけで、得にはならないのではないか。

 一方で、『嫌がらせで不当に低い給与』などというコメントを散見した。個人的にはこれは無いと思う。なぜなら、画像の通り給与明細という歴然とした証拠があるからだ。仮にこの給与明細の内容が、本来のルールから逸脱したものであるならば、違法な賃金未払いとなり、訴訟リスク、社会的制裁リスクが跳ね上がる。仮に1ヶ月満額払っても高々20万円未満の給与に対し、支給額を不当に低くしてマイナスの総支給額にするリスクは、どう考えても割に合わない。法知識および遵法精神の欠如しているような法人ならともかく、曲がりなりにもそれなり以上の規模の医療法人でそれは考えにくい。実際のルールはわからないが、少なくともルールどおりに計算された給与であるか、もしくは悪意の無いミスであることは間違いないと思う。

 もう一つ、『これから介護は』『介護業界はブラックだから何でもあり』というようなコメントも見た。僕個人の認識なので恐縮なのだけど、介護がブラックというのは、労働環境・労働内容に対し給料が安すぎる、という意味のはずだ。それらは給与計算のルールとは関係ない。そもそもの給料が安いことと、給与計算のルールとは別問題だ。

 最後に、『特別な理由が無い限り、勤怠の締日を退職日にするもんじゃないの?』というコメントを見た。これはまあ、普通はそうなのだが、その『普通』は上司の教育または給与計算担当部署(主に総務か?)のお願いによるものだ。例えば月末が勤怠締日の事業所で、15日くらいに「今すぐ辞めたい」と申し出てきた労働者がいるとしよう。その労働者に対し、上司または総務としては、勤怠の切りの良い月末で退職してはどうか、くらいの打診・お願いはする。しかし、月末が勤怠締日だろうがなんだろうが、自分は15日に辞めると宣言されれば、(法的には1ヶ月前までとされているので争う余地はあるが、そんな面倒なことを個人相手にやるとは思えないので、)労働者の意思を尊重するしかない。その結果、場合によってはわけのわからない給与明細が発生するわけだ。

 給与に関する規程・ルールというのは、知っていると意外と納得でき、漠然とした不満感を払拭できたりもするし、一方で、

「やだ……私の基本給、将来にわたって低すぎ!」

となるかもしれない。ただ、知らないよりは知っておくほうが確実に良いことである。

 

だいたいそんなかんじ。

 

早速追記

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公式で出ましたね。案の定、件の方につきましては、大規模謝罪案件っぽいすね。まあバカが根拠も無く騒ぐとこうなるってことで、やっぱ、改めて、給与の計算方法くらい知っておいて損は無いと思いますよ。